抗生剤の未来

 

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

先日バイエル薬品からバイトリルワンジェクトという面白い注射薬が発売されました。従来からあるバイトリルという抗生剤の高濃度バージョンです。

 

一見、従来品の濃度を濃くして、それにあわせて他の成分を多少調整しただけの製品のようにみえますが、この製品がちょっと面白いのはその開発背景です。この製品には二つの背景があると思われます。

 

  1. バイトリルという濃度依存性の抗生剤の特性を活かしていること。
  2. 薬剤耐性菌の問題に一石を投じていること

 

まず①ですが、バイトリルは製品名で、成分名はエンフロキサシンといいます。これはキノロン系といわれる抗生剤です。抗生剤は濃度依存と時間依存という2つにわける分け方がありますが、この区分でいうとバイトリル(キノロン)は濃度依存の製品です。濃度依存とは、濃くすればするほど効果が高いという特性です。つまり、従来品を高濃度にして、より効果的につくられた薬品ということです。まずこの点は開発背景として頷ける点です。

 

次に②の耐性菌についての考え方が、この製品の製作背景の非常にユニークな点です。耐性菌ができる仕組みとして指摘しているのが、中途半端な抗生剤の使い方です。耐性菌ができるのは、抗生剤を薄く使うことで、殺滅しきれなかった菌が耐性を獲得して、抗生剤が効かなくなるとの見解をパンフレットで謳っています。逆に言うと、耐性菌を生じさせないためには、抗生剤を高濃度で使うことが重要だということです。

 

この耐性菌についての考え方は、国内外の学者も指摘しているところです。抗生剤を使うなら中途半端に薄くダラダラ使わず、一回で高濃度で使うべきだ、こうした考え方です。使うときはドンと使う、そして使用しないときは使用せず、薄くダラダラ入れ続けない。。抗生剤の使い方に一石を投じる製品と感じています。

 

この製品を使う、使わないということとは全く別のこととして、この薬品が開発された背景には、立ち止まって考えさせるものがあります。抗生剤の適正使用とはどのようなものかと。

 

黒木

薬品メーカーは最終的に何社程度になるのか

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

オリックスの微研、フジタ買収に端を発した薬品業界の再編ですが、最終的に何社程度になりそうでしょうか。ここではまったく無責任に予想をしてみたいと思います。

 

この業界、薬品メーカーの数は多すぎると私は感じています。養豚業界では、有力メーカーといえど、2~3年に1回程度の新製品発売頻度です。動きの激しい近年、このペースは妥当でしょうか。畜産だからこの程度という考えもあるかもしれませんが、私は遅すぎるペースと考えています。少なくとも1年に1回は新製品をだすべきでしょう。

 

となると、現在のメーカー数より3分の1程度に集約されるべきではと予想ないし希望しています。私の考えでは外資で3社、内資で2社の合計5社程度です。この養豚業界、それで十分でないでしょうか。

 

薬品メーカーの責務とは、新製品を出し続けることに尽きます。これはいい製品とか悪い製品などという基準ではありません。いいも悪いも含めて、1年に1回は新製品を出すべきです。そうでなければ、年に何度も新製品を出すジェネリックメーカーに、すべてをもっていかれることでしょう。

 

新製品を出し続けられないメーカーが存続することは難しくなりそうです。自身の立ち位置、存在理由を今一度確認すべきでしょう。

 

黒木

自分を変えたいとき

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

今日は養豚から離れて書きます。

 

日常生活は毎日の繰り返しです。素晴らしいことかもしれませんが、飽きます。退屈を打破するとき、どのような策があるでしょうか。新しい趣味を始める、行ったことのない店に入ってみる、旅行に行ってみる、などなど。ただ、変化はあっても、やがて同じような日常生活になっていきます。通常はこのような繰り返しで日々の生活が過ぎていくでしょう。

 

現状を変えたいときにもっとも効果があるのは、転職かもしれません。しかし、これは皆に勧められる方法ではありません。誰もが実行できる可能性のある方法の中で、最も効果があるのは、引っ越しではないでしょうか。別の街への引っ越しに限らず、同じ街での引っ越しでさえ、劇的に行動パターンが変わり、見る風景も変わり、考え方も変わってきます。引っ越し作業は大変ですし、お金もかかりますが、現状を変えたいとき、自分を変えたいとき、非常に効果があると思います。

 

引っ越しすると自分の行動パターンやルートが変わります。また、訪れる店も変わります。行動が変われば意識が変わります。この点が重要だと思うのですが、意識を変えることはものすごく難しい作業です。よく他人を変えるより自分を変えろなどということを無責任にいう人がいますが、自分を変えることこそ、もっとも難しい行為だと感じています。このようなことをいう人はたいてい自分を変えたくない人で、他人を変えさせようとしているだけに過ぎなかったりします。自分を変える試みが著しく難しいのは、行動が変わらないのに意識を変えることが非常に難しいからでしょう。人間はそこまで意志の強い生き物でないように思います。

 

引っ越しするさい、不要なものを捨てます。そして、引っ越し先で新しい家具やインテリアなどをそろえることになります。こうした一連の作業を通じて、本当に必要なものとそうでないものの断捨離を行うことができます。日常生活でこうしたことができればいいのでしょうが、なんだかんだ言い訳をして、実行することが先延ばしされたりします。

 

意識改革は非常に難しい。しかし、行動改革は実行できます。行動が変われば、意識が変わる。引っ越しは劇的に行動パターンを変化させる、イベントだと思います。郊外に住んでいたのを街中に引っ越してみる、それによりほとんど飲みに出ることがなかった人が、飲みに出て新たな交友関係ができるかもしれません。もし現状を変えたい、自分を変えたいと考えるなら、引っ越しは意外に有効な手段だと思います。

 

黒木

養豚場の経営者になってみる

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

農家戸数が減り続けています。総戸数は5,000をきっており、今後ますます減るでしょう。小規模農家は減り、他方、拡大意欲のある農場による大規模化が増える。国内の総母豚数は90万頭ほどで変わらず、、といった流れは変わらないようです。

 

経営難のため養豚場を手放すという方もいるでしょうが、主に経営者の高齢化や後継者問題によるものが多そうです。やる気はあっても体が追い付かない、後継者不在のため廃業する、そういったケースをよく聞きます。家族経営や小規模農家の場合、売りに出そうにもなかなか買い手がつかないケースもあるでしょう。ボロボロの豚舎である、設備は古いものの買い直すタイミングでない、など。

 

意欲のある養豚場従業員が養豚場を経営したいと思った場合、このような養豚場を買い取って、経営に乗り出すのはありかもしれません。というのも、この業界、新規参入はかなり難しい。糞尿処理や近所対策など、いろいろな課題を考えると、まず新規参入が難しい業界です。その一方で、養豚場の経営はビジネスモデルとしてはある程度確立されている業界でもあります。豚を大きくして、出荷してお金を得る、豚価が下がっても各種補助金制度もある。。真面目にやっていれば大きくくいっぱぐれる可能性は比較的低いでしょう。しかし、参入障壁が高い。。

 

意欲があり能力がある従業員といえども、出世しても場長どまり。従業員がオーナーになる可能性はまずないでしょう。サラリーマンはリスクが低いといわれますが、会社都合で解雇されるケースもあるなど、必ずしもリスクが低いとも思えません。ある程度確立されたビジネスモデルを持つ業界の経営者として、思い切って参入するのもありだと思います。サラリーマンを続けているのと、経営者になるのと、どちらのリスクが高いでしょうか。養豚場の経営には当然いろいろなリスクがありますが、補助金などさまざまなリスクヘッジの手段があります。また資金繰りなど各種金融機関からのサポートもあります。それに比べ、サラリーマンのリスクヘッジの手段は、実はそんなに多くないように思います。

 

養豚場を手放す側からしても、自分の農場を引き継いでくれる人が出てくれば、嬉しいのではないでしょうか。経営者になってベンツに乗る、それもいいでしょう。従業員目線からは見れなかった別の風景が開けるような気がします。

 

黒木

生産者の視点、獣医師の視点

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

この業界では、生産者と獣医師は協業して関係を築いていきます。いい豚をより多く出荷するために生産者は注力し、獣医師は疾病のコントロールの観点からサポートします。経営者兼獣医師という生産者もいますが、多くは分業しています。あるいは、獣医師の資格を持つ経営者もいますが、あえて獣医師を雇う社長もいます。最新の情報の入手や業界情報に通じるためには、専門の獣医を雇ったほうが効率がいいのでしょう。

 

しかし、生産者と獣医師では豚をみる視点が異なっていると、聞いたことがあります。獣医の盲点は病気の豚を中心に見ているために、健康な豚、いい豚というものを見慣れていないというものです。

 

この指摘は的を得ているところがありそうです。コンサル獣医師であれば、農場の衛生状態や豚の衛生状態に気を使うことから、健康な豚もみているでしょう。しかしながら、たとえば家保の獣医は病気の豚をみることがメインになる可能性が高いでしょう。病気の豚ばかり見続けることの難点は、健康な豚、いい豚がどのようなものか、そういう思考や経験を持ちづらいというものです。

この偏りを調整するために、生産者にお願いして、健康な豚を積極的に観察する機会を設ける獣医もいるでしょう。大事なことだと思います。

 

骨董の世界では、審美眼を養うために、いいものを見せ続けるそうです。本物を見続けることで、偽物がわかるようになるのであり、偽物を見続けても本物はわからないようです。病気をみるとともに、健康をみること、複眼思考が獣医師には求められていくように思います。

 

黒木

人材の募集

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

養豚業界は人材の募集に苦労する業界でしょう。いわゆる3K職場としてとらえられることも多く、もともと人材募集は難しいことの一つです。他業種より1割、2割高い給与で募集して、なんとか応募者がでてくる、といったところでしょう。

 

この状況は昨今ますますきびしくなっているようです。地域によっては、コンビニでさえ時給1,000円以上もある時代で、1,200円程度では応募もさっぱり、などということも聞かれます。ではどのようにすれば、応募者を増やせるでしょうか。

 

この問題について、私は多少楽観視しているところがあります。対策をざっと挙げれば、

 

・他業界に比べて高い時給をアピール

・残業がほとんどないことをアピール

・快適で清潔な事務所づくり(冷暖房完備)

・女性が働きやすい環境づくり(女性専用更衣室・シャワー室、ウォッシュレットトイレ完備)

・福利厚生の充実(結婚相談所登録費用の負担、婚活パーティ参加費用負担など)

 

他にもいろいろあると思いますが、基本は①高い給与、②快適で清潔な職場環境、それと③手厚い福利厚生の3点セットです。①はそのままです。他業種より2割程度高い給与を出すことで、優位さを示せます。いい人材にはお金をしっかりかけるべきです。

 

②の快適で清潔な職場環境は、この業界の大きな課題です。3Kが当たり前の職場、という認識を経営陣側が持っていてはダメでしょう。トヨタよりも清潔で快適な環境にすれば、まず女性従業員の応募が増えるでしょう。設備の改修費用のお金はかかります。しかし、ここはしっかりお金をかけるべきです。アパートも今やウオッシュレットは当たり前の時代。豚舎を新しくする前に、事務所を新しくしたほうがいいのではないでしょうか。豚がいなければ養豚場は成立しませんが、従業員がいなければ、養豚場の経営は成立しません。

 

③の福利厚生が最も重要な点です。世に一流企業といわれている会社が他の会社と何が違うかといえば、この福利厚生の部分が大きいように思います。寮の費用を会社が負担する、食堂で格安で昼食がとれる、各種手当が充実している、などなど。しかし、養豚場の経営者が同じようなことをすべきかといえば、そうは思いません。むしろ、他の業界がしていなこと、たとえば「結婚できる養豚場」のような付加価値のほうがキラーコンテンツになりそうです。婚活パーティの参加費用を養豚場が負担する、そこまで会社がしなければいけないのかと思う経営者もいるでしょう。しかし、昔のように誰かが見合いの話を持ってくる時代ではありません。仲人も絶滅危惧種でしょう。結婚という事業は、個人と企業が戦略的に取り組むべき事業になってきたように思います。

 

経営者は、ベンツを買う余裕があれば、事務所のリフォームと福利厚生の充実にお金を使うべきではないでしょうか。トヨタの工場の求人と比べてそん色ない業界、そのような養豚場の出現に期待します。

 

黒木

メーカーの悪と悪いメーカー

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

最近、薬の欠品が多いようです。また、欠品が多いだけでなく、欠品期間も長くなっているように感じます。生産者サイドにとっては大変な迷惑を蒙ることになり、できるだけ早く欠品を解消するように努力するべきであるのは当然です。とりわけワクチンのような定期的に使用する製品については、安定供給が前提ですので、一刻も早い解決が求められます。

 

欠品にはさまざまな理由があるでしょう。大量注文による品薄状態や、他メーカーの欠品や販売中止による影響、薬の検定落ち、行政による指導などなど。薬品メーカーにはさまざまな欠品リスクがあります。といって、在庫を過剰に持てば、廃棄リスクが高まるだけで、悩ましいところです。とはいえ、徹底的に欠品を避けようと思えば、在庫を多く抱えればいいのであり、そのコストを価格に転嫁できればいいのです。しかし、これは生産者になかなか受け入れられないでしょう。

 

農家の中には、税金対策も兼ねて、数か月分~1年分まとめ買いする養豚場もあります。メーカー在庫に頼るのでなく、自農場で在庫を抱え、対策するのです。また薬品卸の中には、リスクをとって在庫を抱えるところもあるようです。メーカー、卸、農家、三者三様対策を進める時代かもしれません。

 

欠品はメーカーの悪の要素です。これをできるだけ避ける努力をすべきです。しかし、メーカーにとって本当の悪は欠品をすることでなく、新製品を出さないことではないでしょうか。代替品のない製品の欠品はともかく、欠品をすることよりもより重大な悪は、新製品をださないことだと思います。メーカーの存在理由は新製品を出し続けることにつきます。たとえ欠品を出していても、画期的な新製品を出せば、業界に貢献することになるのです。新製品を出し続けられないメーカー、これが“悪い”メーカーかもしれません。

 

「欠品するメーカー」の反対語は、「欠品しないメーカー」ではないように思います。「欠品するメーカー」の対義語は、「新製品を出し続けるメーカー」ではないでしょうか。欠品という悪はこの世から排除しきれないでしょう。悪の要素を薄めるには、画期的な新製品を出すという善で対抗すべきです。

 

黒木