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老人と薬

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

養豚と薬は切っても切れない関係です。豚は基本放し飼いされているわけではなく、豚舎というそこまで広くないスペースで生活しており、当然、各種病気のキャッチボールをする可能性が高いです。たとえば、満員電車にインフルエンザの患者が乗り込んで咳をすれば、他の人にうつる可能性が高いでしょう。環境的に疾病にかかりやすいといえます。そのため、予防的にワクチンを投与したり、抗生剤で治療したり、病原菌の蔓延を防ぐために消毒したりするわけです。

 

他方、養豚場の経営は経済活動です。ペットへの薬の投与と異なり、何でもかんでも薬を使用すれば、経営コストを圧迫します。一般に養豚経営にかかるコストの5%程度が薬品代といわれています。もっとも大きなコストがエサ代で、現在では60~70%程度、ほかに設備費や人件費がそれぞれ10~15%程度でしょうか。この養豚コストの制約のなかで、薬品代は豚1頭あたり1,500円程度が全国平均のようです。

 

もちろん、この1,500円という平均値はエリアによって異なり、たとえば疾病の少ない北海道・東北エリアでは1,000円程度で収まる農場もあるでしょうし、疾病の多い関東や南九州であれば、2,000円を超える農場もあるでしょう。また、新しい豚舎では病気が少ないでしょうし、古い豚舎では病気が多くなる可能性が高まります。そういう意味では、この平均値はあくまで一つの目安です。

 

一般論としては1,500円程度でおさめるべきであるといえますが、しかし、3,000円かかる農場があっても構わないと私は考えています。たとえコストがかかっても病気の対策をしたことで、出荷頭数が増えたり、事故率が減ったり、出荷日齢が縮んだりすれば、元は取れるでしょう。事故が多いが、薬剤コストの低い農場にするのか、薬剤コストが高くても事故の少ない農場にするのか、経営判断になります。

 

人間も老人になれば薬の使用量が増えます。これは自然なことです。同じように、豚舎も古くなれば、薬を多く使用して疾病コントロールすることも必要です。薬剤コストの平均値は正解ではなく、各農場の考える目標が正解となります。

       

黒木