原因を特定することの難しさ

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

原因と結果を特定する因果論は非常に難しい論理です。科学の場合はまだしも、特に実際の社会生活は多様な要因が絡み合い、実験室の実験のようにはいきません。Aという現象とBという現象には因果関係があるかはわからないが、相関関係はある、程度の物言いになることがあります。

 

たとえば、1990年代に一時流行した「割れ窓理論」という説がありました。この理論は現在ほとんど使われることがなくなったのですが、その理由はこの理論が正しくなかったからといわれています。建物の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないという象徴になり、やがて他の窓もまもなく全て壊される、という考え方のもとに、軽微な犯罪も徹底的に取り締まることで、凶悪犯罪を含めた犯罪を抑止できるとする環境犯罪学上の理論です。

 

この理論が有名になったのは、1990年代にニューヨークのジュリアーニ市長が犯罪抑止策として、この理論をベースにして成功したからです。彼の政策はゼロ・トレランス(不寛容)」と名付けられおり、具体的には、警察に予算を重点配分し、警察職員を5,000人増員して街頭パトロールを強化するなど、軽微な犯罪の取り締まりに重点を置いたものです。その結果、N.Y.の治安が改善し、観光客が戻ったと(以上Wikipediaより)

 

しかし、この理論は現在では妥当でないといわれています。たとえば、同時期のアメリカの他の都市でも同様に治安が改善したことなどの反論があります。ではなぜ治安が改善したのか。理由の一つは、この間の出生率が減少したこと。人間の数が少なければ、犯罪の発生率も減少します。ほかには、景気が回復したことも挙げられています。景気が回復し、雇用が確保されれば、人は普通犯罪に走りません。このように、一つの社会現象には多様な要因が複雑に絡み合い、これが原因というふうに特定することは難しいのです。

 

仕事をする中で、原因の特定が簡単なケースもあります。たとえば、温度管理に失敗して、豚が死んだなどは明白な事例です。しかし、あるスタッフのパフォーマンスが別のスタッフより優れている理由は明白ではありません。季節的な偶然かもしれません。重要なことは、因果論にこだわりすぎず、どうすればベストパフォーマンスを出せるか、議論し、実践、検証するPDCAサイクルを回し続けることだと思います。

 

黒木