PED対策私見

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

PEDはやっかいな疾病です。一度農場に入ると農場から排除することが極端に難しい。ほんのちょっとの量で爆発的に拡大する。逆性石鹸による消毒剤でも効果があるというものの、駆逐に苦労します。

 

PEDが日本で拡がってから約3年経ちました。すぐに収まった農場もあれば、そうでなかった農場もあります。その違いはどこにあったのでしょうか。今回は間違い覚悟で、私が感じたことを記します。

 

私自身はオールアウトできたかどうかが、キモだったと考えています。大規模農場も中小規模農場も関係なくPEDは侵入しましたが、比較的中小規模の農場の回復が早かったように感じます。その理由を一括りにするのは乱暴だと思いますが、あえて誤解を恐れずに言えば、中小規模の農場では結果としてオールアウトになったからではないでしょうか。PEDにかかれば子豚は脱水症状で死亡します。その結果、豚舎は空舎になります。ここで洗浄・消毒を徹底する農場もあれば、そうでない農場もあります。重要な点は消毒する/しない、という観点よりもオールアウトできたか/できなかったかにあるように思います。

 

オールアウトして空舎期間をとれれば、疾病の環を断ち切ることができます。この点こそが、PEDに限らず、あらゆる疾病対策の基本になるでしょう。したがって、PEDワクチンを打つ/打たない、PEDワクチン3回打ち/2回打ち、消毒を徹底する/あまりしない、馴致をする/しない、馴致とワクチンを併用する/しない、強制流産をする/しない、、こういった切り口よりも、オールアウトできる/できないという1点がポイントのように思います。大規模農場でPED対策に苦労したのは、オールアウトがしづらいという点ではなかったでしょうか。

 

オールアウトをして、空舎期間を取るということは、その間、豚を出荷できず、収入がなくなります。そのため、経営判断としてオールアウトすることはしづらいでしょう。しかし、今一度思い出すべきは、PEDを直接の原因として倒産した農場はそれほどあったでしょうか。空舎期間により一時的にキャッシュフローが滞りますが、若齢で死んだ豚は、養豚コストの7割ともいわれるエサを食べていないため、経営的なダメージはそこまであるとは言えないように思います。PEDでつぶれた農家はない、そういう人もいます。

 

PEDの侵入を防ぐために、ピッグフローを確立する、消毒を徹底する、人の侵入経路を管理する、従業員同士の交差がないようにする、、などいろいろあるでしょう。これらの予防防疫も重要ですが、より大切なのは、ウィルスが侵入したときにどのような対策をとればいいか、よくシュミレーションしておくことだと思います。侵入リスクをゼロにすることはできないでしょう。しかし、疾病対策は可能です。

 

PEDの侵入経路についてはいろいろな議論があり、今でもあります。それも大事ですが、より重要なのはどのようにPEDを駆逐したかという経験の蓄積・分析と共有であるように思います。

 

黒木