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365分の1のために

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

この業界にはさまざまな営業マンが出入りします。用事のあるときもあればそうでもないときもあります。仮に10回訪問があったとして、本当に重要な訪問は1回ぐらいではないでしょうか。月に1回程度訪問するなら、12か月に1回の計算、延べ日数では365日分の1日の確率になります。では残りの364日に訪問する必要はないでしょうか。

 

本当に重要な訪問、ビッグチャンスというのは非常に限定的なものです。ほとんどは空振りでしょう。では何のために364日準備をし、訪問を重ねるのか。その理由はチャンスがいつ来るのかわからないから、だと思います。大したことのない製品でも、ある時点でものすごく必要とされる瞬間があります。たとえば急な疾病があった時、適切な薬剤を提案できれば、たとえ古い製品であっても売れる可能性があります。しかし、普段訪問や準備していないと、このタイミングが読めないものです。ですので、空振りの訪問を続ける理由があるのでしょう。

 

営業、特にルート営業は、椅子取りゲームをしているようなものです。座るタイミングがいつ来るかわからないので、とりあえずグルグル回って、ウォームアップをし続ける。座るというチャンスが来た時に座るためには、空振りし続けなければなりません。とはいえ、365分の364日はリラックスして、脱力してもかまわないでしょう。いつも全力でいたら本人も疲れるでしょうし、聞いてる方も疲れます。365分の1に100%の力を発揮できるのが、優れた営業マンだと思います。

 

黒木

耐性菌はなぜ出してはいけないのか

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

薬剤耐性菌の問題が養豚場でもクローズアップされてきました。サイクリン系やコリスチンなど、要注意抗生剤として、ピックアップされてきています。なぜ今耐性菌が話題になっているのでしょうか。

 

養豚場で使っている抗生剤の効きが悪くなるから、、ということも理由ですが、より大きな理由は、人間の薬に耐性菌ができるからです。細菌をやっつける抗生剤は、基本的に人間の薬も動物の薬も同じようなラインナップになります。というより、巨大なマーケットである人体薬の技術を動物薬に応用しているという理解のほうが正しいでしょう。したがって、動物薬の分野である抗生剤に対して耐性菌ができると、同じタイプの抗生剤である人体薬の効きがわるくなるからです。

 

特に養豚産業は抗生剤を多く使用しているといわれています。抗生剤の適正使用は今後も厳しく監視されていくでしょう。中途半端に抗生剤を使うことがもっともよくないといわれます。必要な抗生剤は使うべきですが、薄くダラダラ使うような使い方はもっとも耐性菌を生みやすく、避けるべきです。

 

養豚産業は人間の生命と深く関連しています。

 

黒木

MBAとナオトインティライミ

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

一昔前はMBAなどを取得して、転職活動に生かす人も多かったようです。現在ではMBAの価値もそこまで高くはなさそうですが、エリートアッパー層の間では今でも取得する人がいるのでしょう。

 

養豚の現場は意外と国際交流の宝庫です。農場の研修生として、インドネシアベトナム、中国にフィリピンなど、さまざまな国籍の人が来日します。ローカルな仕事ですが、国際交流は盛んです。日本語もろくにできないまま来日する彼らとコミュニケーションをとるには、どのような方法が有効でしょうか。

 

養豚の現場で英語はそこまでコミュケーションツールとして機能していないように感じます。日本人自体が英語がそこまでできないのに、英語でコミュニケーションをとるのは難しいでしょう。仕事としては、英語などを中心に指示を出す形になるでしょうが、仕事以外の部分ではどうでしょう。

 

仕事以外のコミュニケーションの場合、言語に頼らないコミュニケーション手段が有効だと思います。たとえば、スポーツや料理、音楽などは言語を超えて、コミュニケートできる手段かもしれません。農場で働く中国人とコミュニケーションをとるのに、MBAは有効ではないでしょう。むしろ、音楽や料理、スポーツのような活動が有効です。

 

ミュージシャンのナオトインティライミは世界一周したそうですが、その後の彼の活躍にとても影響を与えたようです。つらいことも楽しいこともあったと思いますが、世界を旅するうえで、彼の武器は得意のサッカーと音楽、それに底抜けに明るいキャラクターだったのでしょう。彼のように明るい人柄であれば、どこの国の人でも心を開いたのではないでしょうか。

 

MBAを取得すれば、英語ができる世界のエリート層と交流できるかもしれません。しかし、ナオトインティライミのような生き方であれば、英語が通じない国の人や、子供、老人とも交流できそうです。

 

養豚業界で必要なスキルはMBAでなく、ナオトインティライミ力かもしれません。

 

黒木

ウインドレス豚舎はすべてを解決するか

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

これから豚舎を建てる場合、ウインドレス豚舎になることが多いでしょう。空調や照明などを自動で管理するため、豚舎の管理を合理化できることになるでしょう。古くからのカーテン豚舎の農場からみると非常に羨ましいシステムです。

 

しかしながら、ウインドレスにした豚舎でも、事故は起きます。事故率が以前とあまり変わらないケースなども場合によってはあるようです。結局のところ、システムで省力化できる部分もありますが、豚の管理という一点では、人間の観察力や対応力がものをいうのです。すべてが自動で管理されているので、たとえば空調なども完璧かといえば、必ずしもそうでないこともあるでしょう。そうした時にいち早く気付いて、換気を調整したりすることができる人が、管理上手な人です。

 

ある農場経営者がいっていましたが、管理が上手いスタッフはウインドレス豚舎でもカーテン豚舎でも管理が上手いとのこと。弘法筆を選ばず、のようです。ウインドレス豚舎だから大丈夫なはずと考えるのでなく、調子の悪い豚がいないか、常に観察をすることが肝要です。

 

黒木

仕事の辞め方

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

芸能人の清水富美加さんが事務所を出家引退するというニュースが出ていました。事務所の契約が残っていることや、近日公開の映画やテレビ、CMなどへの影響もあり、批判する人も多いようです。

 

法治国家である日本では、職業選択の自由があり、辞めるのは自由です。そうでなければ、奴隷国家でしょう。したがって、辞職は自由です。特に今回懸念されるのは、清水富美加さん自身が精神的に不安になり、辞めたいという強い思いがあったという点です。本人が追い詰められているといっているのであれば、その思いは尊重するべきでしょう。たとえば電通の社員が自殺した時には、世間では、自分の命を危険にさらしてまで働くことはない、さっさとやめてしまえという論調でした。あるいは、学校のいじめが原因で登校したくない子供には、登校しなくていいと、やさしい言葉をかけます。それなのに、清水さんには厳しい視線が送られます。

 

今回のケースでは、出家と引退が結びついていますが、本来これは別物です。仕事に不満がなく、急に出家引退したのであれば、迷惑をかけるなといわれるのも当然かもしれません。しかし、今回は、彼女自身が精神的な危機を感じ、引退を考えているところに、出家が重なった状態です。仮に、彼女が追い詰められて、自殺でもした場合、世論はどのようになるのでしょうか。事務所が悪いとなるのでしょうか。それよりなにより、自身の身の安全を優先させるべきだと考えます。

 

組織というのは多かれ少なかれ、迷惑をかけたりかけられたりして支えあっている有機物だと思います。引退の前に、もっと会社と率直に話し合う場がなかったか、そういう議論はあってしかるべきでしょう。しかし、すべてをクリアにしてから辞めるべきという議論はあてはまらない気がします。日常の判断能力がある状態では、理性で考えられますが、判断能力が鈍っている場合、クリアにすべきステップがとれないものです。遠慮なく逃げるべきでしょう。

 

翻って、会社や養豚場という組織から見た場合、辞めたいというスタッフに対して、もっと率直に話し合う機会はとれなかったか、当人の精神状態をもっとケアできなかったか、反省すべき点もあるかもしれません。

 

清水さんが宗教団体に出家した点を問題視する人もいますが、仮にユニオンに相談していたらどうでしょう。また違った展開になるのでしょう。労働待遇に不満があれば、まず会社と話し合い、次にユニオンに相談するなどのステップが通常です。しかし、そのステップがとれないほど衰弱していたのかもしれません。

 

引退後すぐに暴露本が出版されたことから、炎上商法でないかという人もいますが、ここでの議論とは関係ありません。本人が追い込まれたと感じる限り、またそれを表明するかぎり、保護されるべきでしょう。それを仮に利用する人がいたとしても、それは別の問題です。

 

この件がどのように展開するのか不明です。違約金の問題などが発生するのも当然かもしれません。しかし、人の命より優先されるものことが、世の中にあるとは思えません。

 

黒木

スケールメリットとリスクヘッジ

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

国内の養豚戸数は5,000戸を割り、他方、規模拡大を目指す農場もあります。大規模農場化を目指す経営者はレバレッジを大いにかけて、スケールメリットを活用することでしょう。大規模農場であれば、飼料や器材、薬品など各種取引業者にコストダウンの交渉をすることも可能でしょう。屠場も、大規模農場に対して、モミ手でやってくるかもしれません。

 

レバレッジとはてこの原理のことです。仮に豚価が高い場合、規模を拡大すればするほど、儲かる額が増えます。スケールメリットが生まれることから、利益率も改善される可能性が高いでしょう。では、規模拡大した農場によってこの業界は独占される日が来るのでしょうか。

 

私は必ずしもそう考えていません。特に、この数年のPEDの流行を見たとき、必ずしも大規模農場が有利であるとは限らないとの思いを強くしています。大規模農場では、オールアウトできない場合連続飼育になり、疾病の環を断ち切ることができません。結果、いつまでもPEDが足を引っ張ることになります。大規模農場は、プラスの方向に作用すれば強いですが、マイナスの方向に振れると弱い部分があるように思います。具体的には、PEDやPRRSのようなやっかいな疾病が侵入て、オールアウトがしにくい場合、中小規模農場よりも対策が難しいという点です。

 

スケールメリットを享受しつつ、リスクを最小限に抑える方法があれば、大規模農場は最強になります。その方法はマルチサイトの確立だと考えています。マルチサイトとは何より守りの布陣です。母豚3,000頭の一貫農場と、母豚3,000頭のマルチサイト農場(娩舎、離乳舎、肥育舎の3サイトなど)では、月の出荷頭数はざっくり6,000頭程度で変わらないでしょう。しかし、ひとたび疾病が侵入した場合、一貫農場では疾病の環を断ち切ることが難しいのに対し、マルチサイトでは、疾病の循環を断ち切りやすいのです。

 

守りに強いとは、他の農家が出荷数を減らしている時に出荷できるということであり、相場に勝てるということを意味します。バブルの時のように、儲かっているときは誰でも儲かります。しかし、皆が儲けづらい時に儲けを出すことこそ、今後の相場で勝っていく秘訣だと思います。

 

大規模農場が本気でマルチサイトを目指してきたとき、大規模農場による寡占が進むかもしれません。

 

黒木

PED対策私見

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

PEDはやっかいな疾病です。一度農場に入ると農場から排除することが極端に難しい。ほんのちょっとの量で爆発的に拡大する。逆性石鹸による消毒剤でも効果があるというものの、駆逐に苦労します。

 

PEDが日本で拡がってから約3年経ちました。すぐに収まった農場もあれば、そうでなかった農場もあります。その違いはどこにあったのでしょうか。今回は間違い覚悟で、私が感じたことを記します。

 

私自身はオールアウトできたかどうかが、キモだったと考えています。大規模農場も中小規模農場も関係なくPEDは侵入しましたが、比較的中小規模の農場の回復が早かったように感じます。その理由を一括りにするのは乱暴だと思いますが、あえて誤解を恐れずに言えば、中小規模の農場では結果としてオールアウトになったからではないでしょうか。PEDにかかれば子豚は脱水症状で死亡します。その結果、豚舎は空舎になります。ここで洗浄・消毒を徹底する農場もあれば、そうでない農場もあります。重要な点は消毒する/しない、という観点よりもオールアウトできたか/できなかったかにあるように思います。

 

オールアウトして空舎期間をとれれば、疾病の環を断ち切ることができます。この点こそが、PEDに限らず、あらゆる疾病対策の基本になるでしょう。したがって、PEDワクチンを打つ/打たない、PEDワクチン3回打ち/2回打ち、消毒を徹底する/あまりしない、馴致をする/しない、馴致とワクチンを併用する/しない、強制流産をする/しない、、こういった切り口よりも、オールアウトできる/できないという1点がポイントのように思います。大規模農場でPED対策に苦労したのは、オールアウトがしづらいという点ではなかったでしょうか。

 

オールアウトをして、空舎期間を取るということは、その間、豚を出荷できず、収入がなくなります。そのため、経営判断としてオールアウトすることはしづらいでしょう。しかし、今一度思い出すべきは、PEDを直接の原因として倒産した農場はそれほどあったでしょうか。空舎期間により一時的にキャッシュフローが滞りますが、若齢で死んだ豚は、養豚コストの7割ともいわれるエサを食べていないため、経営的なダメージはそこまであるとは言えないように思います。PEDでつぶれた農家はない、そういう人もいます。

 

PEDの侵入を防ぐために、ピッグフローを確立する、消毒を徹底する、人の侵入経路を管理する、従業員同士の交差がないようにする、、などいろいろあるでしょう。これらの予防防疫も重要ですが、より大切なのは、ウィルスが侵入したときにどのような対策をとればいいか、よくシュミレーションしておくことだと思います。侵入リスクをゼロにすることはできないでしょう。しかし、疾病対策は可能です。

 

PEDの侵入経路についてはいろいろな議論があり、今でもあります。それも大事ですが、より重要なのはどのようにPEDを駆逐したかという経験の蓄積・分析と共有であるように思います。

 

黒木