オリックスはどこまで買収するのか。

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

オリックスが製薬会社の京都微研についで、ジェネリックメーカーのフジタ製薬を買収したのにはびっくりしました。今後TPPが批准され、動物薬を他国の市場で販売する好機になると考えているとの報道がありました。

 

ワクチンを作っている京都微研に加え、抗生剤メーカーを買収したことから、ひとまず買収は落ち着くとの見方がありますが、果たしてどうでしょうか。私は、オリックスは今後も買収をし続けると考えています。

 

オリックスがどのような考えであれ、動物用医薬品メーカーの買収にうまみを感じているのは間違いありません。それはどのような理由からでしょうか。

 

ここからは私の想像ですが、人体薬の買収にはとてつもない費用がかかります。人体薬の新製品開発にはとてつもない巨額の費用が想定されることは周知の事実です。したがって世界規模の製薬会社はM&Aを繰り返し、費用を捻出します。日本を代表する武田製薬でさえ、世界のランキングの中では10位~20位の中におさまる中堅メーカーです。こういったメーカーを買収するのは難しい。

 

しかし、動物医薬であれば、人体薬と比較して、マーケットが小さいのです。巨額の費用がなくても、マーケットの独占に近い状況まで持って行ける。。マーケットを支配すれば、市場をある程度自由に動かすことができます。買収を進めるのにちょうどいいマーケット、これが動物用医薬品という業界だと思います。

 

ではなぜ(人体薬を含め)医薬品業界に進出するのか。医薬品業界というのは新規参入が難しい業界です。ITなどと違い、製品を作る工場も必要だし、特許などさまざまな規制があります。したがって参入障壁が非常に高い。いいかえれば、既得権益にとっては非常にうまみがあるといえます。逮捕前のホリエモンが、TV局買収しようとしていましたが、TV局というのも規制で守られた業界です。規制に守られた業界は、(参入できれば)おいしいのです。もし、ホリエモンが逮捕されなかったら、TV局を傘下におさめたのちは、製薬業界もターゲットの一つだったのではと思うことがあります。ライブドア製薬ですね。

 

以上のように考えてくると、オリックス独占禁止法に引っかかるまで、買収をすすめていくと思われます。宙に浮いている化血研などもターゲットになっているかもしれません。ワクチンメーカー、抗生剤メーカー、ホルモン剤メーカーなどでかぶらないように買収を進めていくという考えではないような気がします。買えるものはすべて買う。。

 

いずれにせよ、動薬業界に新たなプレイヤーが現れたことは、歓迎すべき事態かもしれません。旧態依然としたこの業界の流通や慣習に、一石を投じることになるかもしれません。

 

今後の展開を注視したいと思います。

 

黒木

儲かっている農場

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

儲かっている農場とそうでない農場はどこで分岐するのでしょうか。

 

まず前提として、普通に養豚場を経営すれば、それなりに食っていける業界だろうと思います。牛ほどでないにせよ補助金もあるし、どの程度機能しているかはともかく、差額関税制度もあります。相場に左右されますが、逆にいえば相場がよければ、ご祝儀相場になります。この2~3年の好相場で絶好調の農場も多いでしょう。

 

そうはいっても儲かる農場の一方で、倒産、売却、卒業へと向かう農場もあります。儲かる農場はこれという得意技を持っているように感じます。たとえば、エサが到着する港から遠い農場と近い農場では、最初からハンディがあります。当然港から近い農場のほうが、エサの輸送コストがかかりません。反対に、港から遠い内陸部などでは、輸送コストが上乗せされるため、スタート地点でハンディを負っています。単純な比較はできないかもしれませんが、鹿島港に近い茨城の生産者は、内陸の栃木の生産者より優位にたっているように思います。

 

エリアの特性はあるにせよ、不利なエリアでも十分儲かっている農場もあります。たとえば、規模拡大によるスケールメリットで勝負するイケイケの大規模農場、設備投資をし続け節税効果を狙う農場、夏場対策を徹底し、通常種付けがうまくいかない夏に繁殖成績を上げる農場などなど。得意技を駆使しているように思います。

 

他方、儲かっていない農場の儲かっていない理由はさまざまでしょう。本来、投資にまわすべき資金を適切にプールしてこなかった農場もあるかと思います。投資して得た利益を使うべきなので、先に利益に使ってしまい、投資に回す資金が枯渇する農場など。

 

いずれにせよ、儲かっていない農場には得意技がないような気がします。どこで儲けるか、そこを明らかにできれば、勝負どころがみえてくるように思います。

 

黒木

経営者と獣医師の距離感

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

最近は獣医師を活用する養豚場がやや多くなったように感じます。これまでの指示書をもらう獣医師のみならず、コンサルを依頼する獣医師の活用です。二人三脚で農場成績安定化を試み、成功されている農場も多いでしょう。

 

ただ、ベテラン獣医とジュニア世代の次期社長候補との組み合わせの場合、主導権を獣医に握られるケースもあるという話を聞いたことがあります。父親世代の獣医と30歳程度の次期経営者では、いろいろな意味で獣医から教わることも多いでしょう。しかしながら、経営者たるもの、外部協力者に自社の経営判断を委ねることはすべきでないでしょう。自分で判断するのが経営者であるのだし、たとえどれだけ素晴らしい「先生」であっても、自分の養豚場を守れるのは自分だけです。

 

マンションの管理会社が、積立金を使い込み逃亡や倒産などという話もあります。プロに任せるられるのは業務であって、経営ではありません。マンションを管理するのは管理会社ですが、管理会社を管理するのは、住人という経営者しかいないのです。獣医師との契約による費用対効果はどの程度か、給与は適正か、従業員の満足度はどの程度か、すべてを判断するのは養豚場の経営者しかいません。経営をアウトソーシングするとき、それは養豚場をたたむときと認識すべきかもしれません。

 

銀行との交渉、資金繰りの計画書、補助金の申請、雇用の確保や人材募集、地域住民との関係構築、出入り業者との関係づくり、どれもこれも経営者にしかできない事業です。獣医の高度な知識に敬意を払うことは大事だと思いますが、同じように、あるいはそれ以上に、経営者の経験や失敗体験も敬意を払われるべきことだと思います。

 

 

黒木

アメリカから学ぶもの

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

アメリカのPED(豚流行性下痢)はだいぶ治まってきているようです。夏に向けてウィルスの活動が弱まったのか、詳細はわかりませんが、まずはそのような状況です。

 

それにしても、2年ちょっと前に突如大流行したPEDに、この業界はさんざん振り回されたきたと思います。これは日本もアメリカも同様の状況です。3サイトが確立されているような先進的なシステムで、疾病対策という意味では日本よりも進んでいると思われていたアメリカでさえ、ほとんどなすすべがないまま大流行になったのです。

 

このような状況を踏まえて、アメリカから何か学ぶことがあるか、というふうに考える人もいるかもしれません。確かにPED対策という観点では学ぶことがないかもしれません。それでも、私自身はアメリカに行って、実際に養豚場や豚のエサともなる穀物畑をみてみたいと思っています。スミスフィールドなど母豚数90万頭規模の農場のスケール感をみてみたいと思うし、それよりもさらにスケールの大きい広大なトウモロコシ畑をみてみたい。結局のところ養豚産業は、穀物産業のごくごく小さな一部ではないかという思いが消えません。巨大なトウモロコシ畑の片隅にポツンと建っている養豚場、私の勝手なイメージが実際にあっているのか、みてみたいのです。

 

PEDの大流行を許したアメリカから学ぶものがないという意見があります。しかし、学ぶことがすべてだとは思いません。頭で理解することだけでなく、五感で感じることも同じくらい重要だと思います。グランドキャニオンの壮大な光景から学ぶことは、おそらくないでしょう。しかし、そのスケール感を体験すれば、おそらく感動するでしょう。巨大な養豚場とそれをはるかに上回る広大な穀物畑から感じることは大いにあると思っています。

  

黒木

 

 

有給休暇と人材募集

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

日本では有給休暇を取りづらいという話があります。これに対し、欧米では、夏休みなどに2週間以上の長期休暇を取得してリフレッシュするという話もあります。休暇の取得という点では、日本は欧米各国に大きく遅れている後進国だと思います。働いても、遊ぶ時間がなければ、生きているためだけの労働でしかありません。私は欧米が全体として必ずしもすぐれているとは思いませんが、有給休暇の消化という点では、我々は明らかに後進国でしょう。2週間以上の有給休暇を取得できる体制になっていない日本企業が、海外の企業と対等に戦える気がしません。休暇時のリソースの確保や連絡体制などなど、つまるところ、危機管理に繋がる話だと考えています。

 

長期休暇を取得するためには、休んだ人の分の仕事を誰かが代替する必要があります。そのためには、業務のマニュアル化が必要になります。養豚場の場合、この点で、ハセップなどを活用できればさらに有効でしょう(実際にハセップのマニュアルで作業が進むかといえば、疑問ですが、、)。マニュアルと人の確保で2週間の休暇が取得できるように、組織を形作っていくべきだと思います。

 

なぜこのような話をするかといえば、養豚場で人材を募集しようとしても、昨今は人集めが特に難しい状況です。給与水準が変わらなければ、コンビニなど、他業界に人材を持って行かれます。作業が大変、ニオイが嫌、、基本的にこの産業はハンディキャップを負っています。そういう状況下で、2週間の有給休暇取得ができる養豚場であれば、応募者にとって魅力になるでしょう。そのような福利厚生を考えるべき時期にきていると思います。

 

そのためには、まず場長や管理職が率先して有給休暇取得する必要があります。有給休暇取得を推進する立場の人間が有給休暇を取得していなければ、説得力がありません。休むことも仕事である、そのことのお手本を示す必要があります。休める環境づくりを実現できる職場でなければ、人は定着しないように思います。

 

生き物相手の商売で、長期休暇などとれるわけがない、という意見には次のように反論したいと思います。10年前に年間30頭離乳が実現できると思っていましたか、と。多産系の導入にはお金がかかりますが、有給休暇消化の仕組みづくりには、それほどお金は発生しないでしょう。他の農場と同じことをやっていれば、同じ結果が出ます。他人と違う行動をするから、違う結果がでるのではないでしょうか。

 

 

黒木

 

PED対策ができる組織、できない組織

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

PED(豚流行性下痢)が日本で大流行してから2年が経ちました。早くに収まった農場もあれば、なかなか収まらなかった農場もありました。病気としてのPEDの特徴や、侵入経路、その対策についてなどはこれまでにも議論されてきましたが、ここでは別の視点、PEDを早くに駆逐できた農場とそうでなかった農場について考えてみます。

 

異論など大いにあるかと思いますが、私が見ている限りでは、小さな農場では比較的収拾が早かったように思います。若齢期の子豚が脱水症状により死ぬため、空白期間、子豚が少ない期間がどうしてもできますが、この期間をすぎれば、比較的回復が早かったように思います。もちろんワクチンなど各種対策は取っていました。

 

これに対し大規模農場の中には、収拾が遅かったところもあったようです。小規模農場と違って、オールアウトできる環境でない農場もあるでしょうが、ここでは組織形態の違いを検討してみます。

 

大規模農場ではえてして、縦割りの組織が多いでしょう。第一農場、第二農場、第三農場、、。それぞれに場長がいて、疾病コントロールの権限を持って活動する状況です。通常業務であれば、このような体育会系縦割り組織は十分機能するでしょうが、PEDのような伝染病の場合にも十分に機能したでしょうか。権限が各農場に委譲されているため、対策も各農場に任せられるケースもあるでしょう。しかしその場合、疾病コントロールが機能しないばかりか、他農場に拡散するケースもあったかもしれません。伝染病の拡散スピードは尋常ではありません。ここは農場ごとに縦割りで動くより、(小規模農場のように)組織横断的なトップダウンで動くほうが効率がいいでしょう。

 

縦割り組織は人間の都合です。しかし、疾病は人間の都合に関係なく浸潤します。縦割り組織は対人間には機能しますが、対疾病には機能しません。疾病はどの豚にも感染する可能性があるのです。各農場に権限を持たせる大規模農場の組織形態は平時には機能しますが、伝染病ブレイク時などではかえって足を引っ張る可能性があります。組織内でゴタゴタしている間に、伝染病が全農場を覆い尽くすスピードのほうが速いかも知れません。大規模農場では平時と有事、それぞれに対応できるような組織編制を検討したほうが効率的に思えます。

 

黒木

養豚経営者はなぜベンツに乗るのか。

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

この業界の経営者をみていると、羽振りのよさを目にする機会が多いようにみえます。。以前ならベンツ、今ならレクサスに乗る経営者が多いように思います。ゴルフ場などでもこういう人たちは多い。。なぜでしょう?

 

この業界はそんなにもうかっているのでしょうか。そういう側面もあると思います。ただ、養豚業は豚肉の相場に左右されます。大雑把にいって、相場がよければ儲かっているでしょう。去年はまさに好相場。高級車を買われた方も多かったと思います。

 

一つの理由として、資金を金融機関からの融資に依存している状況があると思います。養豚経営者は、無借金経営の人を除いて、金融機関からの融資により、大きな資金を供給されています。しかしどんなに儲かっても、繰り上げ返済や一括返済をすることが難しいようです。その結果、単年で出た利益をそのまま申告すれば、重い税金がかかります。それぐらいならむしろ高級車を購入し、経費扱いしたほうがいいということもあります。これが経営者が高級車を買う理由の一つのようです。

 

 

黒木