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ニーズとシーズ

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

この業界でも、各種商材の売り込みは盛んです。設備や飼料、薬などなど。新製品ともなれば、積極的な売り込みがあります。必要と思われるものは購入するでしょうが、不要なものまで購入する農家はほとんどないので、苦戦する営業も多いでしょう。

 

マーケティング用語でニーズとシーズという用語があります。ニーズは願望であり、よく知られています。シーズ(seeds)とは種の意味です。製品も初期段階ではシーズ中心の営業で十分です。たとえば、デジカメでいうと、100万画素から500万画素に解像度がアップすれば、大きな訴求ポイントになります。これがシーズといわれるスペック中心、製品ありきの営業です。

 

これに対し、ニーズとは、デジカメという製品ではなく、デジカメを通じて得られる思い出の画像や、その画像を共有したいという欲求です。一つ上の上位概念にあたります。ニーズが先行し、このニーズを満たすために、シーズが存在するというのが、基本的な考え方です。もっともこれについては、必ずしも順序通りではなく、たとえばテレビの発明以前は、テレビが欲しいというニーズは存在しなかったでしょうが、テレビという製品ができて始めてテレビが欲しいというニーズが出てくるわけです。そのようなケースもあるとはいえ、やはり基本的には、ニーズを満たすために製品を提供するという流れで整理しておけばいいと思います。

 

この業界では、まだまだ製品ありきのシーズ中心の営業スタイルが多いように思います。製品の初期段階では、それでも構わないでしょうが、これほど各種商材があふれている現状では、やはりシーズ中心の営業でなく、ニーズ中心の営業でないと響かないでしょう。ただ、これはすこぶる難しい。なぜなら、ニーズは顧客自身によって顕在化されていないこともあるし、なによりもやもやとあいまいなものだからです。

 

私はジャパネットたかたの通販番組をときどき見ています。デジカメやテレビ、電子辞書などどれもこれも古い製品群を販売しています。しかし、たとえばデジカメであれば、お孫さんの成長を写真に残すなど、具体的なシチュエーションを想定した宣伝で、気持ちにふれます。なおかつ、プリンターやメモリーカードなどをセットして販売することで、高齢の方はデジカメを印刷して、眺める、共有するというニーズをとらえています。どうということのない製品を新しい角度から照らすことで、顧客のニーズをとらえる手法は参考になります。押しつけがましいようで、そうでもない、つい見入ってしまいす。ニーズをとらえる営業の宝庫だと思います。

 

この業界も、シーズ中心の営業では限界があるでしょう。今後は、ニーズ中心の営業も考えておく必要があります。

 

黒木

老人と薬

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

養豚と薬は切っても切れない関係です。豚は基本放し飼いされているわけではなく、豚舎というそこまで広くないスペースで生活しており、当然、各種病気のキャッチボールをする可能性が高いです。たとえば、満員電車にインフルエンザの患者が乗り込んで咳をすれば、他の人にうつる可能性が高いでしょう。環境的に疾病にかかりやすいといえます。そのため、予防的にワクチンを投与したり、抗生剤で治療したり、病原菌の蔓延を防ぐために消毒したりするわけです。

 

他方、養豚場の経営は経済活動です。ペットへの薬の投与と異なり、何でもかんでも薬を使用すれば、経営コストを圧迫します。一般に養豚経営にかかるコストの5%程度が薬品代といわれています。もっとも大きなコストがエサ代で、現在では60~70%程度、ほかに設備費や人件費がそれぞれ10~15%程度でしょうか。この養豚コストの制約のなかで、薬品代は豚1頭あたり1,500円程度が全国平均のようです。

 

もちろん、この1,500円という平均値はエリアによって異なり、たとえば疾病の少ない北海道・東北エリアでは1,000円程度で収まる農場もあるでしょうし、疾病の多い関東や南九州であれば、2,000円を超える農場もあるでしょう。また、新しい豚舎では病気が少ないでしょうし、古い豚舎では病気が多くなる可能性が高まります。そういう意味では、この平均値はあくまで一つの目安です。

 

一般論としては1,500円程度でおさめるべきであるといえますが、しかし、3,000円かかる農場があっても構わないと私は考えています。たとえコストがかかっても病気の対策をしたことで、出荷頭数が増えたり、事故率が減ったり、出荷日齢が縮んだりすれば、元は取れるでしょう。事故が多いが、薬剤コストの低い農場にするのか、薬剤コストが高くても事故の少ない農場にするのか、経営判断になります。

 

人間も老人になれば薬の使用量が増えます。これは自然なことです。同じように、豚舎も古くなれば、薬を多く使用して疾病コントロールすることも必要です。薬剤コストの平均値は正解ではなく、各農場の考える目標が正解となります。

       

黒木        

TPPが成立しなかった場合

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

トランプ米大統領が誕生します。そのこと自体も驚きですし、さまざまな議論が噴出しています。私が気になっているのは、トランプ勝利を日米のマスコミの、おそらくほとんが予想できなかった点です。このような分析力で内外の問題にさまざまな論点を提供できるのか、大変不安に思います。願望と予想は異なります。クリントンになってほしいということと、彼女が勝利することとは全く別のことでしょう。なぜ予想を大きく外したのが、冷静に検証すべきと思います。

 

この業界にひきつけていえば、TPP批准の可能性が著しく低下したという点です。これまでTPPが避けられないという前提をベースに、いろいろな議論がありました。国産豚肉の輸出や、安い海外製品とどのように競合していくかなどなど。それらが、一旦白紙になるということです。

 

振り返ってみれば、TPPが発動したら、という議論は山ほどされましたが、TPPが発動されなかった場合の議論はほとんどなかったように思います。TPPが発動されなければ、国内養豚産業はこれまで通りでしょうか。関税はこのまま、国産豚肉は安泰でしょうか。私たちが反省すべきは、すべてTPPありきという前提で議論を進めてきた結果、TPPがなくなった場合の議論がほとんどなかったように思われる点です。あらゆる可能性を排除せずに議論できなければ、不測の事態にパニックになるだけです。

 

TPPが成立しなかった場合、養豚産業はどうなるのか、どうしていくべきか、これから議論されるでしょうし、議論していくべきです。戦いでもっとも怖いのは、準備をしていない状態で不意打ちをくらうことだと思います。どんな大男でも一瞬で倒れる可能性があります。いろいろなパターンをシュミレーションして準備しておくこと、それこそが、最大のリスクヘッジでしょう。

 

東日本大震災にしても、地震津波の発生確率が極端に低いから、対策について議論しないという姿勢があったように思います。確率が0.0001%でも被害が甚大である可能性があるのなら、さまざまな議論をしておくべきでしょう。TPP議論の死角をトランプに教えられたような気がします。同じ失敗をしないよう、あらゆる可能性にアンテナを張っていきたいと感じています。

 

黒木

転職の心得

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

転職を一度もしたことがない人は、昨今珍しいかもしれません。新入社員が3年で3割辞めるといわれ、また、リストラなど、望まないのに転職活動をせざるを得ないケースもあります。高度経済成長の時代ならともかく、今の時代で、定年までつつがなく1社に勤め上げられる人は非常に少ないでしょう。

 

現代社会で働くものの心得として、転職活動を常に頭の片隅に置いておくべきでしょう。正社員を解雇するのは簡単ではないといわれますが、会社が社員を解雇する権利を持つ以上、社員も常に会社を離れる用意はすべきでしょう。ネガティブな意味でなく、自身の市場価値を常に見直すことも必要です。転職活動を通して、自分に必要なものが見えてくることもあります。たとえば、英語ができるだけで、転職活動の幅が大きく広がるかもしれません。自身が持っていなくて、社会が求めているスキルがわかれば対策の打ちようがあります。

 

転職はチャレンジであり、大きなストレスになります。特に、転職後しばらくは非常に大変でしょう。また、転職先がブラック企業であるケースもあるかもしれません。そのようなことも含めて、転職するさいには給与は2割増しぐらいもらわないと割にあわないという人もいます。各種のリスクを耐える際に、120%の給与は慰めになります。過酷な業務であっても、給与が増えれば、耐えられることもあるでしょう。

 

転職を検討するさいに特に重要なこと、それは調子のいい時に転職を検討することでしょう。リストラなど追い込まれての転職活動は、つい妥協してしまいがちになります。足元を見られる可能性が増えるのです。逆に余裕があるときに転職すれば、いい条件で自分をプレゼンできそうです。株は上がっているときに売るのが原則で、下がっているときに売るものではないでしょう。

 

私自身振り返ってみれば、転職した時は、自身が成長したときだったように思います。これまでと違う環境で新しい業務にチャレンジすること、大変なことも多いですが、大きく成長する機会です。1社に勤め上げることも素晴らしいし、転職を通じて、自身の幅を広げることも素晴らしいことと思っています。

 

黒木

芸能人が記者会見を開く理由と薬品メーカーの欠品対応

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

今年に入り、薬品メーカーの欠品は非常に増えているようです。代替品のある薬品はともかく、代替品のないワクチン類などは大きな影響を与えます。一刻も早い欠品解消が望まれるのはいうまでもありません。

 

この状況で気になったのは、薬品メーカーの対応です。生産者サイドからすればいつ復活するかが焦点ですが、それ以外にも定期的な情報提供が求められます。具体的には、進捗状況の報告です。情報のアップデートを来月の何日に行います、ということを告知するだけで、多少なりともイライラや不満に誠意をみせることができると思いますが、そのようなことを実施しているメーカーが必ずしも多くありません。たとえ「来月も欠品します」という情報であったとしても、定期的な情報提供により、問題に取り組んでいることが明瞭になるのです。情報のアップデートがないと、欠品問題がどうなったのか、忘れ去られたのではないかという不安や不満が出てきます。ですので、次は何日に情報を更新しますという告知が必須なのです。

 

この点で、芸能人が記者会見を開く理由が参考になります。不祥事などで芸能人が記者会見を開く理由は、状況を自ら説明するという建前だけでなく、アポなし取材を避けるためも理由の一つでしょう。もし不祥事を起こし、記者会見を開かないで逃げ回っていたら、さらにアポなし取材はヒートアップするでしょう。取材対象が逃げている印象を与えると、追う側はますます追い込みたいという気持ちになりがちです。だからこそ、何月何日に記者会見を開くと告知し、この問題に取り組むという意気込みをみせ、それまでに想定問答集を用意すればいいのです。

 

このようなことは企業広報の基本でしょうが、案外、逃げ回っている(ようにみえる)メーカーがあるように思います。逃げれば追われます。誠意をもって対応すれば、次につながるでしょう。

 

黒木

 

多産系と希少系

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

昨今トピッグスやダンブレッドといった多産系の種豚が話題を集めています。年30頭離乳を超える農場がぞくぞくと誕生しており、生産成績が劇的に改善しているようです。生産者の関心は非常に高く、多産系の導入をすすめる農場や検討する農場が多くなってきました。

 

その一方で、希少系ともいうべきマンガリッツア豚を日本に導入した農場が、紹介されていました。マンガリッツアはハンガリーの国宝とも言われている豚で、外見は毛むくじゃらで羊のよう。これはハンガリーという寒い地方のため、毛むくじゃらになっているようです。ハンガリーでは放牧されているようで、その影響か、肉質は牛肉に近いといわれています。私も食しましたが、味が濃く、とてもおいしい。確かに牛肉に近い印象をもちました。

 

マンガリッツアの肉質は非常によい。しかしながら、弱点は生産性です。1回の出産で多産系が14頭あるいはそれ以上も分娩するのに、マンガリッツアは7~8頭程度。約半分です。しかも、肥育期間は8~10か月と、通常の豚の6ケ月という肥育日数より長い。これらを総合すると、通常の豚より3倍以上の値段がつかないと成り立たないということになります。ではマンガリッツア導入は検討に値するでしょうか。

 

私自身はマンガリッツアに商機ありと考えています。皆が多産系に向かう状況の中で、希少系を極めれば、独占市場を形成できるかもしれません。ただし、そのまま売ったのでは、3倍も高い豚肉を購入してもらえるか、分かりません。私がこの豚肉を売りに出すなら、豚肉ではなく、牛肉として売り出します。味がおいしく、価格は牛肉より安い牛肉、このような位置づけでマーケティングします。調理方法は牛肉同様、焼くのが基本でしょうか。牛肉に近い味のマンガリッツアをよりおいしくいただける料理方法を有名シェフやクックパドに頼んで共同開発します。

 

またTPPの影響が比較的小さそうな点も、この希少系の優位なところかもしれません。TPP発動により安い豚肉の流入可能性が取りざたされますが、マンガリッツアのような希少系にはあまり影響がなさそうです。今後、家族経営の小規模農家の戦うフィールドはここかもしれません。

 

黒木

大きな農場と小さな農場

養豚関連産業に従事している黒木です。

 

養豚場にはさまざまな規模の農場があります。大規模農場もあれば、中規模・小規模農場もあります。働くとしたらどの規模の農場がいいでしょうか。

 

一般論としては、大規模農場(組織)のほうが人間関係などトラブっても逃げ道があるので大きな会社のほうがいいという人もいます。あるいは、人間関係がよければ家族経営のところがいいという人もいます。結局のところ、気持ちよく働ける環境がいいわけですが、こればかりは働き始めてみないとわからない部分が多いでしょう。

 

私自身は、小規模農場を選びます。大規模組織は分業体制にならざるを得ず、どうやっても養豚業の全体像がつかみづらい。小規模農家で全体の流れをつかむことで、たとえ部分的な仕事であってもその作業を全体の中で位置づけることができると考えているからです。そしてそのメリットが何より大きいと思います。

 

小規模農場でトラぶった場合に逃げ道がないのではないかという意見もありますが、大規模組織でも問題が起これば、案外逃げ道はないものです。会社はそう簡単に異動させたりしないからです。そうであるなら、メリットを重視して小さな農場で働くことを選びます。

 

もっとも単に小規模農場に勤めるのでなく、後継者のいない農場で働けるよう画策します。小規模農場で養豚業の全体像をつかみながら、養豚場の経営を引き継げるよう話し合い・修行をするでしょう。その意味では、農場のサイズよりも、農場の経営状態のほうが着目ポイントかもしれません。年々農家戸数が減っているのであれば、それを引き継ぐチャンスも生まれているといえるでしょう。

 

黒木